朝、蛇口をひねれば水が出た。
電気がついた。
電車がほぼ時間どおりに来た。
道には昨日のごみが残っていなかった。
私たちは、それを「普通」と呼んでしまう。
けれど、本当は普通ではない。
まだ町が眠っている時間に、
ごみを集めた人がいた。
誰にも見られない場所で、
水道管を直した人がいた。
事故が起きないように点検し、
食べ物が傷まないように運び、
数字が間違わないように確認し、
誰かが困る前に、そっと準備した人がいた。
生活を支える仕事には、不思議なところがある。
うまく働けば働くほど、
その人の存在が見えなくなる。
電車が止まれば、駅員さんを見る。
電気が消えれば、作業員さんを探す。
けれど、何も起きなかった日には、
誰の顔も思い浮かべない。
つまり、世の中には、
「何も起きない」
という大仕事をしている人がいるのだ。
きれいな床には、掃除した手がある。
届いた荷物には、眠い目をこすった朝がある。
整った予定表には、誰かの細かな気づかいがある。
家の中にもいる。
黙って洗剤を補充してくれる人。
冷蔵庫の牛乳がなくなる前に買っておく人。
こちらが疲れているとき、
何も聞かずに紅茶を置いてくれる人。
そういう人は、
大きな声で「私のおかげです」とは言わない。
だから、ときどき心配になる。
ちゃんと「ありがとう」が届いているだろうか。
その人自身が、
誰かに支えてもらえているだろうか。
黙って支える人ほど、
自分の疲れまで黙らせてしまうから。
今日、
あなたの一日が大きく壊れなかったのなら、
その陰には、きっと誰かの小さな働きがある。
名前を知らなくてもいい。
立派な言葉でなくてもいい。
店員さんに、
「助かりました」と伝える。
家族に、
「いつも気づいてくれていたんだね」と言う。
職場の人に、
「あなたがいると安心します」と伝える。
ありがとうは、
見えなかった仕事に、
そっと灯りをつける言葉だ。
そして、いつも黙って支えているあなたへ。
あなたが直した小さな乱れを、
誰も覚えていない日があるかもしれない。
あなたが防いだ失敗を、
誰も知らないまま笑っているかもしれない。
けれど、あなたの仕事は消えていない。
誰かが安心して眠れた夜に。
誰かが遅刻せずに着いた朝に。
誰かが「今日も普通だった」と言えた一日に。
あなたの成果は、残っている。
世界は、目立つ人だけで動いているのではない。
拍手される人の後ろで、
椅子を並べた人がいる。
花束を受け取る人の前に、
花を育て、運び、包んだ人がいる。
そして人生の本当の土台は、
たいてい写真の外にいる人がつくっている。
今日は、そんな人に感謝しよう。
「何も起きなかったね」
その言葉の後ろにいる、
たくさんの名前のない英雄たちへ。
あなたのおかげで、
私たちは今日も、
何気ない顔をして生きていられます。
本当に、ありがとう。
そして、黙って誰かを支えてきたあなたも、
どうか今日は、支えられる側になってください。
あなたまで見えなくなってしまわないように。
🌹
ごみ消えて
妖精じゃない
朝の町
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15:00~18:30














