順天堂大学の研究チームが、少し希望のある話を届けてくれた。
皮膚がもともと持っている防御分子「LL-37」に、悪性黒色腫――メラノーマの増殖や移動、浸潤を抑える働きがあるという。
人間の身体というものは、不思議だ。
外から何か強いものを連れてこなくても、
最初から身体の中に、
「そこから先へ行ってはいけません」
と言っている、小さな門番がいるらしい。
LL-37。
名前だけ聞くと、
秘密組織の特殊部隊みたいである。
「こちらLL-37。敵の増殖を確認。移動を阻止します」
皮膚の中で、そんな通信が飛び交っていたら、
私はちょっと嬉しい。
もちろん、まだ
「新しい薬ができました」という話ではない。
研究とは、とても慎重な希望だ。
ひとつ分かったら、
もうひとつ確かめる。
また分かったら、
今度は人の身体でも安全なのか確かめる。
奇跡を叫ぶより、
間違えないように、
小さな灯りを一つずつ置いていく。
医学の美しさは、案外そこにあるのだと思う。
そして私は、こういう研究を知るたびに思う。
人間は弱い。
けれど、弱い身体の中にも、
ずっと私たちを守ろうとしているものがいる。
自分では気づかないところで、
今日も働いている。
だから、生きるということは、
全部を自分一人で頑張ることではないのかもしれない。
皮膚の小さな分子にさえ助けられているのだから。
私も明日は少しくらい、誰かに助けてもらおう。
LL-37だって一人で世界を救えとは言われていない。
人類も、だいたいチーム戦である。
まだ治療になるかは分からない。
それでも、
「身体の中には、まだ知られていない味方がいる」
そう分かっただけで、今日の世界は昨日よりほんの少し、頼もしく見える。
科学者のみなさま、どうかその小さな門番のことを、もう少し詳しく調べてください。
私はこちらで、
自分の門番として戸締まりを確認して寝ます。
🌹
皮膚の中
三十七番
夜勤中
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