例えばこんな恋人同士になりたい。
一緒に選んだ、白いペアマグタンブラー。
お店で見つけたとき、彼は見た目の格好よさを確認し、ほとんど迷わず決めた。
頭のいい人の即決というものは、
こちらに妙な安心感を与える。
きっと容量も、保温性も、飲み口の使いやすさも、未来の洗いやすさまで計算しているのだろう。
私はそう思っていた。
けれど、実際に使ってみると、蓋の飲み口からは少しずつしか飲めなかった。
すると彼は言った。
「これ、邪魔だな」
そして蓋だけが、
私たちより先に別れを経験した。
私は思わず言った。
「最初から蓋のないものにすればよかったじゃん」
高かったのに。
以前も、
彼が選んだシャワーテントを使ってから、
「天井に窓がなかった」
と言い出した。
あなたが選んだのです。
この人は、頭がいいのか。
適当なのか。
たぶん、両方なのだ。
世界の大きな問題は深く考えるのに、
マグカップの蓋とテントの天井については、
現物が届いてから考える。
人間の知性とは、
いつも均等に配られているわけではないらしい。
それでも私は、
この蓋のなくなったペアマグが好きだ。
完全に同じ形でなくてもいい。
最初に思い描いた使い方と違ってもいい。
少し不便なところを笑って、
いらないものを外しながら、
残ったものを大切に使えばいい。
恋人らしさとは、
完璧なお揃いを持つことではなく、
「ほんと適当なんだから」
と呆れながらも、
その人のぶんの飲み物まで
用意したくなることなのかもしれない。
蓋とは別れた。
けれど、マグはまだ二つある。
今日も並んで、同じ湯気を立てている。
それだけで私は、かなり嬉しい。
🌹
蓋なくも
ふたつのマグは
湯気夫婦
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18:30~翌2:00





















