むかし、
「おうち」という名の嵐の中に、
ひとりの女の子が住んでいました。
屋根も、扉も、食卓もありました。
でも、安心だけがありませんでした。
親の足音は雷。
大きな声は地震。
冷たい言葉は、目に見えない石ころでした。
女の子は毎日、
心を小さく折りたたんで暮らしていました。
ある夜、とうとう言いました。
「もう限界」
「早く消えてくれないかな」
「ちゃんとした家に、生まれたかった」
そんなことを思った自分まで怖くなって、
女の子は布団の中で泣きました。
すると、窓の外のお月さまが言いました。
「あなたは悪い子じゃないよ」
「誰かに消えてほしいと思うほど、
あなたの苦しみが大きくなってしまっただけ」
お月さまは、
「親だって大変なんだから」なんていう、
今いちばん聞きたくない説教はしませんでした。
ただ、女の子の隣に座って言いました。
「ちゃんとした家に生まれたかったよね」
「やさしくしてほしかったよね」
「何も悪くない日に怒られないで、
泣いたら抱きしめてもらいたかったよね」
女の子は、何度もうなずきました。
叶わなかった願いは、
なかったことにしなくていいのです。
悲しかったものは、悲しかった。
許せないものは、
まだ許さなくていい。
お月さまは、
女の子に小さな鍵を渡しました。
「これは、これからのおうちの鍵」
「生まれる家は選べなかったけれど、
これから誰を心に入れるかは、
少しずつ選んでいいんだよ」
女の子は、嵐の家から一歩離れました。
ある日は別の部屋まで。
ある日は外のベンチまで。
ある日は信頼できる人へ、短い連絡をひとつ。
ほんの一歩でも、
それは立派な避難でした。
離れることは、親を捨てることではありません。
ずっと置き去りにしてきた自分を、
ようやく拾いに行くことです。
やがて女の子は、
自分の心が眠れる家をつくりました。
大声より笑い声の多い家。
泣いても怒られない家。
冷蔵庫のプリンに書いた名前が、
ちゃんと尊重される平和な家。
大好きな人と、
犬の寝息を聞きながら、
安心して目を閉じられる家。
生まれた家は、
人生の最初のページ。
けれど、最後のページではありません。
あなたが消える必要はない。
消していいのは、
「家族だから我慢しなければならない」
という古い呪いのほうです。
私は親を許しませんでした。
立派にもなれませんでした。
ただ、自分にひとつだけ約束しました。
私まで私を見捨てない。
おやすみ、私。
この人生で今日もよく、
ここまで生き延びたね。
#明日出勤です #本日出勤です #雑記






























































































































































































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