昔々、あるところに、
「わたしには未来がない」と思っている女の子がいました。
女の子のカレンダーには、明日がありません。
朝、目を覚ましても今日。
眠って、もう一度目を覚ましても、やっぱり今日。
「また今日かあ」
時計だけは律儀に針を回していました。
同じ一日を何周もする時計も、きっと少し疲れていたことでしょう。
けれど、不思議なことがありました。
女の子が泣いている人の隣に座ると、
その日の夕焼けは、昨日より少しだけ優しい色になりました。
誰かに傘を差し出すと、
雨の音が小さな音楽に変わりました。
「ありがとう」と伝えると、
道端に昨日まではなかった花が、一輪咲きました。
失敗した日もありました。
言葉を間違えたり、何もできずに泣いたり、パンを真っ黒に焦がしたり。
それでも女の子が「ごめんなさい」と言って、もう一度誰かに手を伸ばすたび、
同じはずの今日が、ほんの少しずつ違う一日になっていきました。
ある晩、女の子が部屋へ帰ると、
色とりどりの箱が、天井まで積み上がっていました。
赤い箱。青い箱。
星の模様の箱。
リボンが少し曲がった箱。
「こんなに注文した覚えはないけれど……」
女の子が首をかしげると、窓辺のお月さまが教えてくれました。
「これは、あなたが今日という一日の中で出逢った人たちの、心の宝箱ですよ」
箱の中には、女の子が誰かに渡したものが入っていました。
悲しい夜にもらった言葉。
黙って隣にいてくれた時間。
ふと見せてくれた笑顔。
誰にも気づかれないと思っていた、小さな優しさ。
女の子は驚きました。
「でも、わたしは何も残せなかった。
望んでいた未来だって、つくれなかったのに」
すると、お月さまは静かに笑いました。
「あなたの優しさは、あなたの目が届かないところで、誰かの明日へ運ばれていったのです。
あなたに救われた人が、次の日を生きてみようと思った。
その人がまた別の誰かに、優しくした。
あなたは未来を持っていないと思いながら、
たくさんの未来を、つくっていたのですよ」
最後に、お月さまは女の子へ、いちばん小さな箱を渡しました。
それは、女の子自身の心の宝箱でした。
中には、
今日も起きられたこと。
泣きながらでも歩いたこと。
誰かの幸せを願ったこと。
そして、夜まで生きたこと。
女の子が「できなかった」と思っていたことよりも、
ずっと大切な宝物が、静かに輝いていました。
女の子はその箱を胸に抱き、初めて安心して目を閉じました。
人には、それぞれ、できることと、できないことがあります。
だから夜は、できなかった自分を裁くためにあるのではありません。
今日できた小さなことを胸に抱き、
「わたし、今日もよく生きたね」と、自分を眠らせてあげるためにあるのです。
女の子が眠ったあと、窓の外には、
まだ名前のついていない新しい朝が、そっと生まれていました。
それを人は、
未来と呼ぶのかもしれません。
おやすみなさい。💋
今日を生きたあなたはもう、
誰かの心に、美しい宝箱を残しています。🎁
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20:00~翌4:00

























