人間ってね、
とても愚かなの。
たとえば、出会った相手が
自分の人生でこれ以上ないと思えるほど
好みの人だったなら、
年齢も、距離も、立場も、
暮らしの違いさえも、
「では、どうにかしましょう」と
考えはじめてしまう。
理性が大きな判子で
「無理です」と押しても、
心はその書類を勝手に差し戻す。
なんとも往生際が悪い。
けれど、その愚かさがあるから、
人間は常人にはできないことまで
やってのける。
何もなかった場所に家を建て、
嵐のあとにも種を蒔き、
もう誰も愛せないと思った夜の先で、
もう一度、誰かの手を取る。
きっと人間は、
正しいことだけでは
生き抜けなかったのです。
「それでも」と信じること。
「なんとかする」と立ち上がること。
傷ついたあとにも、
まだ幸せを諦めきれないこと。
それらは少し愚かで、
同時に、途方もなく賢い。
だから、その人の愚かさを
簡単に笑わないでほしい。
それはきっと、
その人が今日まで生きるために
必死で架けてきた
不格好な橋なのです。
まっすぐではなくても、
ところどころ壊れかけていても、
その橋があったから
ここまで渡ってこられた。
人間の愚かさは、
欠点ではありません。
それは、
どうしても生きたかった人が残した
努力の跡です。
そして愛とは、ときどき——
世界中から愚かだと言われても、
たった一人のいる明日へ向かって
橋を架けようとする、
人間にだけ許された
小さな天才なのだと思います。
🌹
海の底に沈んだ泡だって、
いつか誰かの手に届くかも知れない。🫧
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